HOBBY WORKS 観劇記

主に観劇した舞台の感想や考察などを主に。10/11start

THE 黒帯10周年に寄せて~ブレメン、そしてTRUCE~


10年。

10年というと私達は何を思い浮かべるだろう。
スウィートテン、子供の10歳はおよそ第二成長期の始まり、十年一昔。

歳月の一区切りとして10年ほど身近なようで達し難いものも無いのではないかと思う。

 

 


2007年に結成、初演を果たした演劇ユニット【THE 黒帯】*1が今年10周年を迎える。

そして10周年を記念して、今年5月から聖地ポーカーズ*2全面プロデュースの元、「黒帯三昧」と銘打って毎月ユニットの作品を絡めたイベントを開催してきた。
今月12月がその総括となる。
上演される演目は【TRUCE】。
この作品は今年2月から3月にかけて「観劇三昧」*3にて開催された「手のひらフェスティバル」で総合優勝であるゴールド大賞と感動部門で2位を獲得した作品である。*4

 

と、例え誉れある事実でも列挙しただけでは私が今抱いている喜びの半分も伝わらないので経緯をお話させて頂きたい。


今年2017年3月に大賞を獲得する前、
1月下旬に聖地ポーカーズとのコラボ「聖地ポーカーズTRAD」として
THE 黒帯の作品「ブレメン」*5を再演している。


この「ブレメン」、タイトルに幾つかの意味合いが紐付けされているのだが
中でも童話の「ブレーメンの音楽隊」をモチーフに作られている。
このブレーメンの音楽隊、ブレーメンというのは都市の名前で、それぞれお役御免を喰らった家畜たちが手に手を取って都市で再起を目指すという内容なのだが、実は都市ブレーメンには到着していないのだ。
その途中の小屋を盗賊から奪取してそこで幸せに暮らすという物語なのである。
強いては、「どこで生きるかというよりも、誰と生きるか」という話でもあり、
「目指す場所とは違っても、辿り着いた場所で生きる道を掴み取る」話でもあるようで…

2017年1月のブレメンのパンフレットでTHE 黒帯の脚本・演出・役者を務める榎原伊知郎さんはこう述べている。

 

 

ブレーメンの音楽家』を読んだ時に自分の姿が重なったんですよ。

ブレーメンを目指していた若い頃には「自分にはこの道しか無い」と頑なに思い込んでいたけれど、年を重ねると柔軟性が身に付いてきて「こっちに面白いもの見つけちゃった。行ってみよう」と思えるようになる。

人生にはいくつもの分岐点があって、面白いと感じる方へ進んでいいんじゃないか……

 

10年近く劇団をやっていく中で、いろんなことがありました。

みんなでずっと同じ方向を向いていられるわけもなく、時にはバラバラになったり、誰か一人だけ落ち込んでいる人がいたりする。

諦めそうにもなるけれど、そんな時に思い出して踏ん張れる作品にしたかったんです。チラシのキャッチコピーにもなっている「俺たちはやり直せる 何時でも、何度でも・・・」という言葉が、この作品に込めた思いそのものですね。


これはあくまで私感だが
そもそも人気急上昇していた聖地ポーカーズのファンがTHE 黒帯としての作品に触れたのはおそらくブレメンが初めてのことであり、その再演が非常に好評だったが故にそこからTHE 黒帯の世界に踏み出した人も非常に多かったのではないかと思う。

その1月からの流れで、THE 黒帯を知った人達がTRUCEを1位にまで押し上げたのではないだろうか。

THE 黒帯が賞レースに出場したのは今回が初めてで、
10周年にして初演作品で大賞を獲得するという脚本の存在を勘ぐりたくなる流れと、
そこからの10周年イベントの総括でその作品を10年ぶりに再演するというドラマティックさ。

しかも毎年公演を打ってきたTHE 黒帯として去年2016年は、初めてユニットの本公演を行わなかった年であり、
それぞれが外部で活躍し、ファンの獲得と実力向上に努めたであろう1年でもあった。
結果的に外部出力を強めた先で聖地ポーカーズとの興行を成功させ、その勢いのままにブレメンへと繋がったように思えるのだ。


2016年の活動にどんな意図があったかは知り得ないが、結果的に外側に目を向け、各々が出来ることを巡り合わせ、与えられた場所で果たしてきた結果が10周年への実りに彩りを添えたのではないかと思う。


決して思い通りではない道程を経て、彼らは確かに今ブレーメンに辿り着いたのではないだろうか。

 

そしてタイミングや切っ掛けはあったにしろ、ここまで祝福された10周年を迎えられる舞台人が一体どれだけいるのだろう。
過去作品を紐解いていく上で既に舞台を退いた素晴らしい役者さんも数多く見てきた。
そしてこうしている今も新たに舞台に上がることを決意する役者さんもまた数多く存在する。

数多ある出会いと別れの中で、THE 黒帯というユニットと巡り合い、共に10周年をお祝いできるという、奇跡のような、運命のような今に、とても喜びを感じるのだ。

それは勿論、作品のクオリティやメッセージ性、舞台への情熱や、メンバーの方々の舞台人としての確かさ、一人の人としての丁寧さ、それを見詰めてきてこんなに祝福したいと心から思っているからで、

なので一人でも多くの人にこの機会に乗ってほしいと思うし、ほんの一瞬でも今回一度切り見た舞台でもいいから一緒にお祝いがしたいのだ。

 

「これはとても良いものです」と胸を張って人に薦める事は難しい。
「良い」と感じて信じた自己責任で人様の貴重な時間を割くことになる。
だけど敢えて言おう。
THE 黒帯は良いです。それは大前提で、


彼らの〚10周年〛というブレーメンへの到着を共に祝うのはどうだろうか。
どうか今回のTRUCE、数々のお祝いついでに是非、

そしてこの機会をTHE 黒帯に触れる第一歩にして頂きたい。
そしてお祝いするなら一人でも多いほうがずっと楽しい。
ちょっとしたお祭りに顔を出す気持ちで。どうぞ。どうか。

 

 

THE 黒帯10周年記念キャンペーン【黒帯三昧】

12月大総括上演『TRUCE』

 

【イントロダクション】

旗揚げにしてすでに名作!

【THE 黒帯】が贈る、喜怒哀楽ジェットコースター戦場ドラマ。

——切り取られた現実、とり残された真実。

歴史的スクープを求め、念願の最前線にやってきた戦場カメラマン。
そこで繰り返される、兵士達の非日常的な日常。
普通に笑い、普通に泣き、普通に戦って、普通に死ぬ。
ファインダー越しに捉えたものは、世界の矛盾か、己の深層意識か…

THE 黒帯公式サイトより

劇場
新宿シアターブラッツ
東京都新宿区新宿1-34-16 清水ビルB1

公演日程
2017年12月13日(水)〜17日(日)

出演(Wキャスト)


RED TEAM

カメラマン 役 桜田 航成

少佐・曹長 役 橋本 達也
狙撃兵   役 岡村 まきすけ
通信兵   役 榎原 伊知良
隊長    役 早川 剛史
兵士    役 大中 小

BLUE TEAM

カメラマン 役 渡部 将之

少佐・曹長 役 程嶋 しづマ
狙撃兵   役 清水 宗史
通信兵   役 野村 龍一
隊長    役 早川 剛史
兵士    役 深澤 恒太

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チケット販売:カンフェティ

聖地ポーカーズ 聖地ポーカーズTRAD×THE 黒帯 TRUCE | Confetti [チケット情報満載]

 

特設公式サイト

TRUCE – THE 黒帯 × 聖地ポーカーズTRAD

 

 

THE 黒帯による初演TRUCE トレーラー


【THE 黒帯】TRUCE

 

 

 

 

初演の非ネタバレ記事はこちら

 

hobbyworks175517.hatenablog.jp

 

はじめまして

このブログの趣旨


面白い舞台がある、あった
例えばそれがまだ公演期間であるとか
DVD等の映像記録で見返せるとしたら?
けれど観るかどうか迷っている
どんな話だったのか知りたい
これを観た人はどう思ったのか知りたい
でもネタバレしてしまっては、かけがえない初見の喜びを失う事になる

そんな繊細な悩みの中に居る同志達へ
というと大袈裟ですが
「圧倒的なネタバレは避けつつ、どんな作品か知りたい」
そんな欲求を満たせるブログを書きたい
それが趣旨です

ブログ構成的には
●ネタバレを避けた作品感想
●ネタバレを含む作品感想
●ネタバレを含む作品考察
という感じになるかと思います
タグで分類されており、ページ序盤でネタバレへの注意喚起も致しますので誤ってネタバレを踏み抜く事もなく、また観劇後もその感想共有をしに遊びに来ていただける様な、そんな、仕様に出来たらと思っています


人様に読んでいただくブログを書いた経験は無く
観劇歴も未だ浅い若輩者です

また一概に「ネタバレ」と言っても
その線引きは個々で異なり、私の「非ネタバレ」が誰かの「ネタバレ」になりうる事もあると思います
見極めの難しい所ですし
喜びや感激を言葉にするのは大変です
言葉が気持ちに追いつく事は難しい
追えば追うほど陳腐に感じてしまいます
だけどその中にあっても、言葉を尽くし気持ちを尽くし
どこかの誰かの喜びに少しでも繋がれたらと思っています








はじめて訪れて下さった方がこれを読んでくれる訳では無いと思うのですが、
「何故書いているんだろう」
「何故こういう形式なのだろう」
と考えて下さった方への説明になります
それは「私」という個への歩み寄りであります
書き手の意思を読もうとして下さる、こんな嬉しいことはありません
ですから、私を知る方にもそうでない方にも
「はじめまして」
読んでくださってありがとうございます

THE 黒帯 〖TRUCE〗ネタバレしない編

ここではまだTHE 黒帯 TRUCE をご覧になった事がない方を沼に突き落とすにも安心して作品を知れるよう決定的なネタバレを避けつつ魅力をお伝えしようという意図のページになります。

ネタバレの範囲というのは個々人で線引きが分かれる所であり、多分に私の主観を含む事をご了承くださいませ。

 

 

 

◎イントロダクション
旗揚げにしてすでに名作!【THE 黒帯】が贈る、喜怒哀楽ジェットコースター戦場ドラマ。

——切り取られた現実、とり残された真実。

歴史的スクープを求め、念願の最前線にやってきた戦場カメラマン。
そこで繰り返される、兵士達の非日常的な日常。
普通に笑い、普通に泣き、普通に戦って、普通に死ぬ。
ファインダー越しに捉えたものは、世界の矛盾か、己の深層意識か…

───THE 黒帯ブログより

 

 


戦場ドラマ、と聞くと浮かぶのは
「ぐわー!足が、俺の足がぁあ!!」
とか
「くそっ、おいしっかしろ!衛生兵ー!衛生兵ー!!!」
みたいな激しい血みどろシーンを見所に据えているのかと思ってしまうが、この作品はそこをメインにはしていないのでご安心を。

あんまりずっとグロいのとか戦場の悲惨さを克明に描いてるのはちょっと……という方にも落ち着いて見られる作品。

 

ではこの作品の喜怒哀楽バランスを表すならどうか、と言われるとイントロダクションにもある通り「全方位ジェットコースター」
全方位と言うからには怒りも哀しみもちゃんとあって、
痛みややり切れなさも、戦場の話なので勿論ある。
でも有りがちな描写に走らず、むしろ〝全方位〟を成立させる為に絶妙なバランスでシナリオが組み上がっており、そのバランスの良さこそがこの作品の強みだと私は思う。

 

 

見所

◆俳優陣

旗揚げ公演ともなると劇団員さんもお若い。
2016年現在から遡ると9年も前の公演だ。
となるとクオリティが気になるかもしれないが、これは1000%安心して欲しい。
既にこの地点で各俳優さん達の舞台歴が長いというのもあるが、揃いも揃って猛者である。

特に橋本達也さんのファンの方は必見。
個人的には「名優橋本達也、此処に在り!」と銘打っても過言では無いと思う。余す所なく素晴らしい。

榎原さんの宛書きの的確さと、それに120%で応える橋本さんの素晴らしさが堪能できる。

また、今は退団されたTHE 黒帯旗揚げメンバーの稲田徹さん(Wikipedia https://g.co/kgs/PyEHY4 )の舞台役者としての勇姿も存分に拝める。

稲田さんが居ないとこの作品は締まらなかったと思うなあ
いや勿論どなたにも言える事だけど特に。
声優さんとしてその美声は既に誰しも耳にした事があるとは思うが、舞台役者としての稲田さんをご存知無いという方も、素敵な俳優さんが拝めると思ってお楽しみに!

 

◆衣装

THE 黒帯さんと言えば公演ごとに素敵なコスプレ状態になるというイメージがあるが、
今作は〝戦場〟という事で「武装・軍服」フェチの方は心のご準備を!

 どの程度のレベルのフェチズムかというと、私の画像フォルダがスクショでパンパンになるレベルです(わかりにくい)

あとサービスショットもあります(笑)

 

 

◆全体

この作品特に、雰囲気が作り込まれてるのでそのまま楽しめます、というか雰囲気がとても良いので堪能してください。雰囲気の先に進むと、力強いメッセージが伝わってくるので繰り返し違ったテイストで楽しめる良作です。

特に一周目と二週目の受取り方の違いが素晴らしいんだ!素直な気持ちで一周目を味わって欲しいです。

 

 ◆総まとめ

心地よく揺さぶられる感情

笑って泣ける良作

題材の重さが気にならない

入りやすい作品

THE 黒帯の粋を集めた登竜門

 

 

 

ネタバレを避けると書けるのはこの位でしょうか。
人によってネタバレの範囲は異なるので難しい所ですが、今回は「より迷ってる人の背中を押せるような」感じで書かせて頂いております。観点がミーハーなのは筆者のせい。ごめんなさい。
この記事で気になったら是非!

 

 

 


〖 観る方法 〗

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各作品3000円ちょっとで半永久的に好きな時に楽しめるぞ!